読書レビュー 「こころ」/夏目漱石

現代文の授業でやるので夏目漱石の「こころ」を読んだ。

教科書にも載っているため読む前から多少の内容は知っていたが教科書の掲載部分だけを読むのと全て読むのではだいぶ印象が変わって驚いた。

教科書の掲載部分だけでは恋愛をテーマにした小説のように思えるが、全体を通して読むと裏切りというものをテーマにした小説のように感じる。

まずこの小説には3つの裏切りがある。

1つ目は先生の叔父による裏切り。

2つ目は先生のKへの裏切り。

そして3つ目が「私」による先生への裏切りだ。

上記の2つは小説自体で言及されているから分かるだろうが、3つ目のの「私」の裏切りとは何か。

それは冒頭にあった、「私」の独白である。

このことから「私」は手記を書いていることが分かる。

何故、手記を書くことが裏切りなのか?

それは最終章の先生の遺書から分かる。

先生は自分とKのことを「私」の心の中に留めていて欲しいと言っているのだ。

しかし、「私」は手記に書いている。

これは間違いなく裏切りであろう。

「こころ」は明治末期特有の時代と共に殉死していくような陰鬱な雰囲気が漂う裏切りの小説だと私は感じた。

(追記) 現代文の先生も全く同じことを言っていて、自分の考えが間違っていなかったようで嬉しかった。その先生は別に好きではないが。